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2009年11月30日月曜日

ドバイ危機と最後の貸し手



今日のニュース

UAE*中銀、市場に資金供給、ドバイ危機で流動性**不足回避へ(財経新聞)

お奨めの一冊

貨幣経済学の基礎

(前略)流動性の保証者としての中央銀行の機能が特に重要になるのは,危機状況においてである。19世紀前半のイギリスで観察された典型的な経済恐慌においては,危機は以下のようにして広がっていった。まず個別の企業(債務者)が支払い困難に陥ると,その債権者もまた危機に引きずり込まれ,第三者への債務を返済できなくなる。こうして信用の連鎖に沿って,流動性問題による企業の連鎖倒産が起きた。次に流動性危機は企業部門から銀行部門へ波及した。つまり銀行の支払い能力に対する預金者の信頼が動揺し,大量の預金引出しがなされ(預金取り付け)銀行も窓口閉鎖に追い込まれた。こうして銀行システムの機能が麻痺すると,企業の流動性問題はますます悪化した。このように両部門の危機が相互に強め合う悪循環が,貨幣経済の調和を破壊した。
このような問題を避けるためには,中央銀行が最後の貸し手(LLR;lender of last resort)としての機能を果たすことが要求される。中央銀行は,(自国通貨に関する限り)支払い不能になることがなく,随意に流動性を創出することができる唯一の経済単位である。中央銀行はこのような権限を利用して,経済の不安定化に歯止めをかけるべく,銀行に対して「割引窓口」を開く措置をとる。これにより銀行は,貨幣市場でいつでも中央銀行貨幣を調達できるので,預金の大量引出しに対処することができる。こうして上記の悪循環を断つことが可能になる。注意すべきは,このとき追求されているのが、個別銀行・個別企業を支援することではなく,貨幣経済(としての市場システム)の機能条件を保証することだということである。(後略)(「3 中央銀行・銀行の行動 3.3 中央銀行の行動が信用供給に及ぼす影響 (3)流動性の保証者および最後の貸し手としての中央銀行」より一部抜粋

*UAE=United Arab Emirateについてはwikipedia:アラブ首長国連邦をご参照ください。
**流動性についてはwikipedia:流動性 (経済学)をご参照ください。